SIGMA 17-35mm f/2.8-4 EX Aspherical HSM分解清掃
うちの防湿庫は密閉容器にシリカゲルを入れて使っているのですが、シリカゲルは定期的に乾燥させてやる必要があります。これを怠ったために内部にカビが発生してしまいました。このレンズは、外気の流通があり、山に持っていったりしていたので、その時に胞子を吸い込んだのでしょうね。
カビは外部の手あかや汚れが付いたところに生えるものと思っていましたが、分解してみたところ、中玉ユニットに生えていました。
今回はこれを清掃してみたいと思います。
使用する工具
- 精密ドライバー
- レンズオープナー
ゴムやシリコンなどの柔らかい樹脂を押し付けて回すタイプのオープナー。かに目レンチ用の穴が無い場合に必須。カニ目を使うより滑って傷をつけるリスクが少ないので、まずこちらでトライしても良い。
- かに目レンチ
- 無水アルコール
レンズの拭き上げに使う。無水アルコールはやや単価が高いので、イソプロパノールや消毒用アルコールなどでも良いが、吹き上げた後残渣が残らないことが重要。消毒用アルコールは、水分が残るからダメという人がいるが、からぶき用のペーパーですぐに拭き取ることで慣れれば残渣は残らない。どちらかというと、油脂分が不純物として含まれていると、残渣が残りやすい。
- オキシドール
カビが落ちづらい場合、使用する事でほぼ完全に菌糸を落とすことが出来る。実際に試して問題が無かったので、現代のレンズであれば、コーティングもこの程度では侵されることは無いと思われる。
- 綿棒
- シルボン紙
私はDusper Σを使用している。専用品も売っているが、デブリが出なければなんでも良い。未使用品が外部の埃で汚染されては話にならないので、箱に入っているタイプがお勧め。
- ブロワー
普段お使いのもので良いと思う。スプレー缶式は嫌う人がいるが、私は埃を吸う事が無いのでスプレー缶式の方が良いと思います。
分解手順
まずは、フロント側から。前玉ならば、フロント側からのみで取り外せます。
刻印のラベルを剥がすとカニ目を差し込む穴が現れるので、カニ目レンチで外します。ラベルを綺麗にはがすのは面倒なので、レンズオープナーで開けられるのであればそちらをお勧めします。
前玉をカニ目レンチで外します。
カバーを固定している4本のネジを外します。これは中玉を取り出す際にこのカバーの後ろにドライバーを突っ込む貫通穴が開いているためです。
続いて、リア側です。まずは、マウンタとコネクタを外します。
一番手前のカバーを外します。
基板がむき出しになるので、はんだ付けを外します。基板側は組み立て時に備えてクリーニングしておきます。フレキシブル基板へのハンダ不良は後の故障の元なので、元通りにはんだ付けできるようよく観察しておきましょう。
なお、この段階で、後群は取り外すことが出来ると思います。カニ目は入らないので、レンズオープナーを使って外していきます。内側のレンズユニットは裏表がわからなくならないよう注意しましょう。
ギアユニットを取り外します。また、フレキシブル基板を固定しているプレートも取り外しておきます。
ズームリングのゴムを外すと、写真のシルバーの部品にサイドからリングが固定されているので、これを外すとズームリングが外れます。
フォーカスリングのゴムを外すと、下に一周アルミテープが張られているので、これを剥がすと、手前側のみ外れます。このテープは、フォーカスをテレ寄りかワイド寄りかの微調整をして固定してあるので、元の位置をマーキングしておいた方が良いです。
私は不用意に外してしまったので、組み立て時に最短撮影距離がスペック通りになるように調整する必要がありました。調整は特に難しくはないです。
はじめの方で述べた貫通穴が露出するので、ここからドライバーを差し込んで、写真のネジを外します。
フォーカスや、ズームリングを回転させると、写真のように黒い樹脂ブッシュ付きのネジが取り外せる位置が6か所ほどあるので、順次取り外します。少し小径の真鍮のリングの付いたものは取り外す必要はありません。ブッシュやネジの外径は一緒ですが、厚みは場所によって異なるので、注意してください。
フロント側のネジが3個並んでいる所は回転範囲のストッパーを兼ねているので、3つとも取り外さないと、別のネジが取り外せません。
これで、レンズユニットが取り出せる状態になったと思います。
あとは、各レンズを清掃して、逆の手順で組み立てるだけです。胞子が残っていると、またカビが生える基になるので、レンズ以外もすべてアルコールで拭き上げ、最後にレンズに残渣が残ろないようにレンズ表面を拭き、誇りを飛ばしながら組み立てていきます。
清掃の結果、完全に元のクリアな状態を取り戻しました。慣れないとリスクを伴う作業ですが、やる価値は十分あるでしょう。